2008年10月27日

特別寄稿: モメンタムを生んだ決勝ドライブ (Inside Blitz 生沢浩さん)

先日、僭越ながら Inside Blitz寄稿させて頂きましたが、今回はそのお返しとして生沢さんが特別に「Da Bull Pen」のために原稿を書いて下さいました!
生沢さん、本当にどうもありがとうございます!

※この稿の無断使用・引用は固くお断りします。


Da Bull Penの読者の皆さん、テキサンズファンの皆さん、こんにちは。InsideBlitzの生沢です。

先日、texamaniacさんから僕のブログ「生沢浩のNFLレポート Inside Blitz」に寄稿していただいたので、そのお返しに記事を書かせていただきました。

暇つぶしに読んでいただければ幸いです。


「モメンタムを生んだ決勝ドライブ」

フットボールはモメンタムのスポーツだ。

野球やテニスなどと違い、使う道具はボールのみ。しかも、直接的な肉体のコンタクトが競技の内容のほとんどを占めるから、それだけにモメンタムによって引き起こされた精神的高揚が試合に作用しやすい。

ビッグプレーひとつでモメンタムは大きく変わる。それが試合の、ひいてはシーズン全体の流れをも変えることが起こりうるのだ。テキサンズが今季初勝利を獲得した第6週のドルフィンズ戦でも、モメンタムが試合の結果に大きく影響した。それは最後の決勝TDドライブでのふたつの4thダウンコンバージョンに見て取ることができる。

テキサンズの最後のドライブは自陣24ヤード地点から始まった。この直前にドルフィンズがRonnie BrownのTDランで28-23と逆転しており、モメンタムはドルフィンズにあった。

最初のプレーはQB Matt ShaubがドルフィンズのLB Jeoy Porterにサックされて8ヤードのロスとなる。この試合で何度となくプレッシャーを受けているPorterに出鼻をくじかれた形だ。このドライブでもSchaubはPorterのラッシュを常に背後に感じなければならなかった。

ドルフィンズの側から見れば、逆転をした直後のドライブで相手QBにプレッシャーをかけ続け、完全に勝ちパターンが出来上がっていた。テキサンズを4thダウン10という状況に追いやるまでは。

自陣36ヤードからの4thダウン。残り時間はわずか52秒でタイムアウトはひとつだけ。これがタイタンズに与えられた条件だった。ドルフィンズはこのダウンを止めれば勝利は9分9厘手にすることができた。そこに起死回生のビッグプレーが生まれる土壌があった。

プレー前のモーションにより、テキサンズのフォーメーションは右にレシーバーが3人、左のSEにAndre Johnsonのみが残る隊形となった。ショットガンからスナップを受けたSchaubは右にロールアウトして、左サイドを縦にあがるJohnsonにスローバックによるパスを投げた。

JohnsonはドルフィンズのSS Yeremiah BellとCB Andre Goodmanのダブルカバーを受けていた。Shaubの放ったボールはJohnsonの前に回りこんだBellの両手におさまりかけた。しかし、その両腕の間に自分の左腕を割り込ませたJohnsonがボールをもぎ取るようにしてパスキャッチをしたのである。

ゲインは23ヤード。一気に敵陣41ヤードに進入するプレーとなった。この瞬間に残り時間52秒とタイムアウトはテキサンズに有利な材料に変わった。

余裕のできたテキサンズはショートパスを駆使してゴール前3ヤードまでボールを進める。ここで早いタイミングのパスプレーをコールしたのは、Porterのラッシュによってオフェンスの流れを止められたくないというGary Kubiakヘッドコーチの計算があった。

そして、再び4thダウンを迎える。エンドゾーンまでは3ヤード。ここでKubiakがコールしたのはSchaubによるドローだった。アウトサイドのレシーバーのカバーにLBを割いていたドルフィンズは中央を守る選手が誰もいなかった。Schaubはまっすぐに進んだ後、やや右に進路を変えた。その動きに合わせてRG Chris MyersがドルフィンズDE Randy Starksをインサイドに押し込んでオフガードに大きなランニングレーンができた。

これはKubiakとKyle Shanahan攻撃コーディネーターが、ドルフィンズ守備がミドルのゾーンを空ける傾向があることを読んでのプレーコールだった。試合後、Kubiakは「ギャンブルだった」と認めたが、この決断がテキサンズに勝利を呼び込んだ。

JohnsonのパスキャッチとKubiakのガッツィーコール。これがテキサンズにモメンタムを生んだ。これで勢いがついたのかテキサンズは翌週のライオンズにも勝利して連勝を達成した。開幕4連敗のあと、少しずつではあるがチームが上昇気流に乗りつつある。これもドルフィンズ戦でのふたつの4thダウンコンバージョンが生んだモメンタムの効果なのかもしれない。

6 件のコメント:

texamaniac さんのコメント...

生沢さん、改めまして原稿ありがとうございます。MIA戦のラストドライブ、本当にテキサンズにとって重要な攻撃でした。あの勢いをそのままに、気がつけば3連勝。もちろんフィジカルな強さも必要ですが、モメンタムやメンタルも同じだけ重要なんだなと感じます。テキサンズのような負けグセのついた若いチームにとっては尚更のことかもしれません。
恐らくこのドライブは今シーズンを、いやKubiak-Schaub体制を救ったドライブになったのではないかと思います。ファンの間ではきっといつまでも語り継がれる攻撃シリーズとなるかもしれません。

匿名 さんのコメント...

To doです。
生沢さんいつもブログ拝見しております。我々が気づかない事象や裏情報など、とても楽しみにしております。
Texamaniac様、このBlogにも大物登場、すごいです。
あのドライブ、Sackされてもう終わりかと思ってから、Davisへのpassで危機を脱し、INT食らったと思ったらReplayで覆り、あのAJの奇跡的なキャッチ、その後もWalter, AJへのpassで一気にゴール前まで進み逆転への期待が盛り上がったものの、incomplete二つでやばい雰囲気、そして最後のQBドローへとつながりました。まさにジェットコースターのごとく喜んだり悔しがったり・・・あれほど疲れるドライブは見たことがありません。手は勿論全身じっとり汗が出て、勝利の余韻に浸るという感じより、とにかくほっとしてソファーに座り込んでいました。
あれ以降Schaubは見違えるような動きで、一気に調子を取り戻し、プレーコールもさえているように思います。もし、もしですよ、今年ポストシーズンに進めることがあれば、間違いなく歴史に残る転換点だったと思います(期待しすぎかもしれませんが・・・まだまだあきらめてはいませんよ)。

匿名 さんのコメント...

ジョンソンのあのキャッチがなければ今頃は秋風が吹いていたかもしれません。NFLでは1つのミス、1つのビッグプレーがチーム状態を長きにわたって変えてしまうことが多いですよね。昨年から今年にかけてのNYGの在りようを見ていると本当にそれを感じます。

テキサンズいいですよね。
球場もいいし、ファンサポートも充実してるような気がします。

各ポジションにタレントも育ってきてますし、POまだ全然いけますよね。

youzy_yam さんのコメント...

3連勝、おめでとうございます。
youzy_yam です。
生沢さんのblogに登場するとはさすがですね。
「Slaton vs Green」という記事を書きました。
http://youzyyam.blogspot.com/2008/10/slaton-vs-green-2008-houston-g7.html
暇があったら読んでやってください。

匿名 さんのコメント...

生沢です。
texamaniacさん、原稿の掲載ありがとうございました。いいタイミングでテキサンズが3連勝を飾ってくれたのでよかったです。

来月かスーパーボウルで取材旅行に行く計画を立てているので、その際にはまた寄稿させてください。

To doさん、こんにちは。僕のブログをごらんいただいているとのことでありがとうございます。

テキサンズは楽しみなチームになりましたね。僕はJohnsonのダイナミックなパスキャッチが好きです。後半戦、どこまで勝ち星を伸ばせるでしょうか。AFCサウスの鍵を握る存在になりそうです。

texamaniac さんのコメント...

皆様コメントありがとうございます。
本当に今最高のチーム状態ですね!オフェンスを好調を維持したまま、CIN戦では(相手がCINとは言え)、ディフェンスも頑張りTDを許さず。おまけにスペシャルチームでもパントリターンTDと3拍子揃っての大勝利でした。次は久し振りの敵地、真価の問われる一戦だと思います。まずは星を五分に戻したいところです。
生沢さん、またの原稿とても楽しみにしております。そして取材旅行、羨ましすぎます。気をつけて行ってらしてください!